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2023/12/22
国際線客室乗務員(CA)と淑徳の英語教員と兼業する荻原先生にインタビューしました(後編)
日本全国でもおそらく淑徳にしかいない、現役の国際線客室乗務員と英語教師を兼業されている荻原先生。淑徳の卒業生でもある荻原先生が、キャリア教育の在り方も含めて、これからの社会を生きる今の淑徳生に対して伝えたい想いを語っていただきました。

(神内)
 荻原先生から見て、教師と客室乗務員とそれぞれの仕事の魅力や長所をぜひ教えてくれますか。
(荻原)
 教師の仕事の魅力は何といっても生徒の成長を感じられることです。1年間を通して観察することで、生徒の成長がわかります。あと、将来の可能性を持った中学生や高校生と話すことは、私にとっても学びになります。
 生徒と1年間接する教師と違い、客室乗務員の仕事で出会うお客様は基本的に一度きりの関係です。そのような一期一会の中で、お客様を無事に到着地へお届けし、機内で快適に過ごして頂く事こそ、保安要員としてもサービス要員としても客室乗務員の魅力だと思います。
(神内)
 なるほど、教師と生徒の関係、客室乗務員とお客様の関係は、対照的ながら、ともにその点が魅力なんですね。
(荻原)
 共通する魅力もあります。それは教師も生徒から、客室乗務員もお客様から、「ありがとう」と直接言ってもらえることです。自分の仕事の評価を直接伝えてくれるのは、やりがいにつながります。
 最近のフライトでも、最初は否定的なご意見を仰っていたお客様が、飛行機を降りる時に丁寧に感謝の言葉をかけてくれました。そうした機会があった時や社員同士のコミュニケーションが良く安全運航に努められた時などに社員同士でグッドメッセージを送り合う習慣があります。
(神内)
 とてもいいお話ですね。確かに、教師も生徒からこんな言葉をかけてもらった、あんなことをしてくれた、といった話を職員室で話し合ったりしています。教師も客室乗務員も、様々な人との出会いがやりがいにつながるのかもしれないですね。
(神内)
 最後に、キャリア教育に関して、ぜひ荻原先生にいろいろ教えていただきたいと思います。淑徳に限らず、日本全国の学校で今、キャリア教育が重視されています。キャリア教育の在り方については様々な考え方がありますが、私個人は実際に社会に出て働く際に必要となるスキルは、学校教育だけで培うことは難しいのではないか、とも考えています。
 荻原先生がこれまで社会人として働いてこられた中で、社会に出て必要なスキルはどのようなものでしょうか。
(荻原)
 客室乗務員の経験から言えば、やはり対人対応が必要な仕事である以上、コミュニケーション力が一番必要ではないかと思います。ただ、それをどうやって養うかは難しい話です。私は子育てもしていますが、子どもに習い事をさせるのは効果があるかもしれません。そうすることで、家族以外の人と触れ合う機会が増えるからです。
 それから、社会に出ても「居場所づくり」はとても大切なことだと思います。社会であっても、自分の「居場所」を持っている人とそうでない人では、能力の向上もストレスの有無も全然違うように思います。どのような環境であっても自分の「居場所」を作っていけるスキルは、社会で生きていく上で大切かもしれません。
 その意味では、私は高校時代に淑徳の留学コースで1年間アメリカに留学した経験が「居場所」を作るスキルを磨くのにとても役立ったと感じています。私自身も留学する前は決して積極的な性格ではありませんでしたが、留学をしてから性格は変わったと思っています。言葉の通じない環境で生きていくためには、自分で積極的に「居場所」を作らなければならないからです。引きこもりがちであったり、不登校気味のお子さんも、もしかしたら留学をすれば全く違う性格になるかもしれないので、海外経験をしてみてはどうでしょうか。
(神内)
 それは本当にそう思います。私も以前、淑徳の留学コースの担任をしたことがあるのですが、中学校の時に不登校気味だったり、悩みやすい性格だった生徒が、留学して帰国すると自己肯定感がとても強くなっていて驚きました。そうした経験が社会に出てからもきっと役立ってますよね。
 教師と客室乗務員という珍しい兼業をされている荻原先生ならではの、キャリア教育という分野でやってみたいことや、やってほしいことがあったら、ぜひ教えてくれますか。
(荻原)
 私自身もキャリア教育についてこれまで経験がないので詳しいことはわからないのですが、今の生徒を見ていると、将来の夢がない生徒が多いように感じます。英語力を伸ばしても、英語を何のためにどう使いたいのか、目的が決まっていない生徒が多い。その意味では、確かに何のために勉強するのか、目的を伝えるためのキャリア教育は必要かもしれません。
 あとこれは私たちの責任なのかもしれませんが、魅力的な大人を見れていないのかもしれない。私は客室乗務員の仕事にやりがいを感じていますが、やりがいを持っている人の話を聞く機会がなかなかないのかもしれません。
 実は私自身、高校で留学したきっかけは中学生の時に教えてくれた、尊敬する英語の先生が奨めてくれたからなんです。その先生も当時としては珍しく留学経験のある先生でした。だから、私自身の留学経験もまた、その先生のキャリアに憧れたことに原点があるという意味で、キャリア教育の成果なのかもしれません。
(神内)
 確かに、何のために勉強をするのか、目的意識を持つことはキャリア教育の一つの目標でもあります。自分も目的意識を持たずに大学まで進学して、その後に随分紆余曲折、試行錯誤しながら今の仕事をしているので、反省も込めてキャリア教育の担い手になっていきたいと考えています。
 魅力的な大人の話を聞く機会はとても大切ですね。実際に、先日私が授業を担当するクラスで、ゲストスピーカーとして荻原先生に話してもらったのですが、生徒の目がいつもの授業とは明らかに違っていて、終わった後も休み時間に早速先生に質問に行く生徒もいたり、本当に刺激を受けていたのがよくわかりました。先生のように世界中をフライトしているグローバルな経験を持った魅力的な大人が身近で生徒に話してもらえる機会はほとんどないので、そうした話を聞くだけでも生徒の意識が全然変わるのだなと思います。
(荻原)
 自分が日々感じている仕事のやりがいが、生徒にとって何かの学びになるのは、兼業しているメリットですね。
(神内)
 そうですね。だから自分も兼業というスタイルを生かして、弁護士と教師の2つの仕事を続けていけたら、と思っています。
 最後に、荻原先生から今の淑徳生の後輩たちに、どんな中学・高校時代を送ってほしいか、アドバイスをよろしくお願いします。
(荻原)
 淑徳生にはぜひ「全ての科目について、学ぶことに無駄はない」という意識で、どんな科目であっても貪欲に学んでほしいと思っています。大学受験に必要のない科目まで学ぶことは遠回りに思うかもしれないけれど、だからといって内職したりするのは本当にもったいない。学費を親に払ってもらって学べる立場がどれだけ貴重なことか、その立場をもっと利用してほしいです。大人になって何かを学ぶ時は、自分で学費も払わなければならないのだから。
 あとは、一度しかない中学・高校時代なので、とにかく精一杯青春を謳歌してほしいです。だから勉強以外にもいろいろなことに挑戦してほしい。その気持ちが、実は社会で働く時にどんな仕事であっても役立つと思います。
(神内)
 本日はどうもありがとうございました。これからも兼業教師として、淑徳のキャリア教育にぜひ力を貸してほしいです。
(荻原)
 こちらこそ後輩たちのためにできることがあれば、ぜひいろいろやってみたいです。よろしくお願いします。